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論説 社寺への毀損行為 不敬行為防ぐ地域づくりを

平成29年04月17日付 2面

 各地の神社・仏閣において、文化財建造物等を液体で汚す事件が起こってゐる。京都・奈良の社寺に続いて、沖縄・守礼門や東京・明治神宮などでも被害が確認されてをり、いづれの事件もまだ解決に至ってゐない。また、奈良・橿原神宮では落書き事件も発生してゐる。二年前にも社寺の建造物に油のやうな液体をかける類似の事件が頻発し、当時は宗教的な動機が話題ともなったが、今回の事件では犯人・犯行動機なども未だ不明である。
 被害のあった社寺が文化財指定を受けるなど著名であることから、さうした面からの注目を集めてゐるが、長い伝統のあるもの、また人々が大切にしてきたものに対して平然と毀損行為をおこなふ者たちがゐるといふことに不気味さを覚える。さらに信仰を持つ立場としては、畏怖の念を感じずにかうした行為に及ぶ犯人に対して強い憤りを感じざるを得ない。



 文化財等に指定されるやうな施設への被害は、マスコミによって取り上げられて世間の目を集めるが、信仰施設への毀損行為については、文化財指定の有無等だけでなく信仰迫害といった面からも考へていかねばならない。二年前の事件において神社本庁が全国各神社庁長宛に出した通知文「神社奉護と防災対策の徹底について」では、「社殿の一部とは言へ汚穢によって毀損すれば、当該建物等の文化財指定の有無に拘らず、神明に対して誠に畏れ多いことであり、尊厳護持上も誠に遺憾な事態であります」と記されてゐたのである。
 全国八万社の神社を考へると、普段は無人であったり、地域の人々によって管理されてゐたりする神社が多数存する。かうした神社への毀損行為を防止するためには、神職や総代だけでなく、地域と連携した対応が必要となることはいふまでもない。神社への信仰は、地域との密接な関はりのなかで育まれてきた。境内は地域社会に開かれ、また参拝の便宜のためにも開放的なものが多い。開放的なるがゆゑに犯行が容易ともなり得るが、地域との連携があるからこそ、見回り強化などの犯罪抑制のための対応も可能であり、さうした創意・工夫が必要であらう。



 神社への犯罪行為に関しては、液体で汚すといふ今回の行為のほか、落書きや賽銭泥棒などさまざまなことが起こってゐる。さうした中で近年注目されてゐるものとしてテロ行為における「ソフトターゲット」の問題がある。
 ソフトターゲットとは、軍事目標のうち警備や監視が手薄で攻撃されやすい標的のことで、民間人や民間車輛、民間の建物などを指すものである。テロ行為においては、スタジアム・コンサート会場・遊園地・ショッピングモールなどの大規模集客施設などで、自衛隊や警察によって防禦されてゐない不特定多数者が集合する施設を指してゐる。外国の事例を見ると、クリスマスで賑はふマーケットや花火大会の会場をトラックで暴走するやうな事件が起きた。
 わが国でもさうした動向が注目され、内閣官房が関係省庁と連携して注意を喚起し、宗教関係団体に関しては文化庁宗務課が関係方面に「ソフトターゲットにおけるテロ対策の推進について」の協力を求めてゐる。



 先に述べたやうに、多くの神社は地域とともにあるために開放的な空間であり、また初詣や祭礼をはじめとする諸行事には多くの人々が集まる。いはゆるソフトターゲット的な要素を持つものであり、テロ行為に対して充分な配慮をすることも必要であらう。
 過去においては平成の御大典の際に、神社への放火テロなど極左暴力集団による破壊活動がおこなはれたことがあった。ソフトターゲットといふ攻撃されやすい、また人員的にも不十分な環境にありながら、神職・総代などが一致協力し、大切な神社を護持すべく邁進してきたのである。さうした過去の経験からも神社奉護のあり方について今一度考へたい。
 被害の度合ひから考へると、放火や爆破などのテロ行為と、液体による被害には相違があるかもしれないが、神社、そして信仰への冒涜といふ点では同様である。各地における神明への不敬について、改めて憤りを表明するとともに、不敬行為・不法行為に対する充分な備へを検討しつつ、何よりさうした行為を犯させないやうな地域社会づくりに邁進していかねばならない。
平成二十九年四月十七日

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