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論説 憲法改正実現に向け 唯一最大の好機を逃すな

平成29年09月11日付 2面

 現憲法施行七十年となった今年の五月三日、安倍晋三首相は自由民主党総裁として、立党以来の党是である憲法改正の早期実現に向け、改憲の発議案を国民に提示するための具体的議論を開始して自民党が憲法審査会を牽引し、党と国会の使命を果たすやう訴へた。そして自ら、我々が長年憲法改正の大きな目標としてきた憲法九条を正面から取り上げ、「九条一項、二項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込む」との改憲案を提示した。さらに、「二〇二〇年を新しい憲法が施行される年にしたい」と、三年後といふ目標時期まで明示して改憲論議の促進をはかるやう主導した。
 これを受けて党の方では、保岡興治本部長のもと憲法改正推進本部の組織人事体制の強化をはかり、改憲検討項目を、九条の自衛隊明記と教育の無償化、緊急事態条項の新設と参議院の改革の四つに絞り込み、自民党案の具体的検討に着手した。今年秋に始まる臨時国会には、その改憲案を提出する方針でゐたのである。
 ところが、八月三日に内閣改造を断行した後の記者会見で安倍首相は、あへてスケジュールにはこだはらない旨の発言をおこなって、後退の印象を与へた。しかし、それは改憲反対を唱へるマスコミをかはすことを狙ったもので、その真意は、新しい内閣の発足を契機に、今後は党主導により党と国会での本格的審議に委ねるといふところにあった。



 安倍総裁に代はって党で改憲を主導するのは高村正彦副総裁である。高村副総裁が「これからの憲法論議は党にお任せいただき、内閣は経済第一でやってもらひたい」と安倍首相に伝へたことで、それは明白である。しかも首相の意を汲み、「最初からスケジュールを放棄するのもよくない」とも語ってゐる。洵に頼もしい限りである。
 高村副総裁は、先の憲法九条の集団的自衛権をめぐる憲法論議でも党で主導的役割を果たし、公明党を説得して平和安全法制を実現させた実質最大の功労者である。目下のところ、安倍首相の案は野党の日本維新の会も評価してをり、加憲方式の改憲を主張してゐる与党公明党も最終的には反対し難いだらう。また、そもそもこの九条改正案は、最大野党・民進党の新しい代表に選ばれた前原誠司議員が主張してゐたものでもあり、その実現可能性はかなり高い。安倍首相からバトンを渡された弁護士出身でもある高村副総裁の成熟した政治的手腕に期待したい。



 神社界においては、安倍首相の提言に先駆けて今年一月末、神道政治連盟内に「憲法改正推進委員会」が設置され、独自の憲法改正草案の検討作業が進んでゐる。各地区代表二人の委員からなる二十人で構成された委員会はこれまで四回開催され、そこでは重点改正項目として、憲法前文、天皇条項、憲法九条、政教分離条項、家族条項、緊急事態条項、環境条項、改正条項の八項目が取り上げられた。新しい環境条項を除き、他はすべて敗戦直後にGHQが出した「降伏後ニ於ケル米国初期ノ対日方針」や「マッカーサーノート」「神道指令」などに基づき、「日本が再び米国の脅威とならぬやう」にとの意図をもって帝国憲法が、精神的にも条文の上でも骨抜き改変されたものばかりなのである。それをどのやうに改め、日本の真姿を取り戻すのか、委員一人一人の見識と研鑽によるところが大きい。
 神社人、神道人としての立場からだけでなく、広く日本の良き伝統と国柄を踏まへ、将来のあるべき姿をも見据ゑて説得力のある草案づくりが進められることを望みたい。



 安倍内閣の支持率が低下したとはいへ、憲法改正の国民運動にとっては今がこれまでの唯一で最大の好機なのである。国会の衆参両院で改憲勢力が三分の二以上を確保できたのは、現憲法の制定以来初めてのことだからだ。
 いまだに多くの憲法学者や政党のなかには、自衛隊を違憲とする議論が止まないが、自衛隊が憲法に明記されるだけでさうした議論は終はり、その効果も大きい。高村副総裁は「法理論でいえば、二項を削除する方がよい。しかし、政治家が求めるべきは、理論的にベストの案ではなく、実現可能なベターな案である」(八月三十一日付日経)と語ってゐる。我々も、当面は二段構へで臨むしかないかも知れない。この好機を逃してはならないのである。

平成二十九年九月十一日

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