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杜に想ふ 解決の日を 山谷えり子

令和6年06月03日付 5面

 ホタルが飛び交ひ、梅の実も熟し始める六月。あぢさゐ、くちなし、イネも青みを増すなか色彩と香りのシンフォニーを楽しんでゐる。八十四種、三千株もある皇居東御苑のハナショウブは見頃を迎へ、上品な花びらに外国の観光客もうっとりしてをられる。
 さて、先月私は超党派の拉致議連会長代行として拉致問題の解決を訴へ分析を進めるために被害者家族会と救ふ会の方々とともに訪米してきた。ホワイトハウスでは国家安全保障会議(NSC)上級部長、国務省や財務省高官、連邦議員らとお会ひしたが、北朝鮮はロシアに武器を送り、それらがウクライナで使用され続け、また以前からハマスなどのテロ集団にも渡ってゐたこともあり、世界の平和を脅かす存在としてアメリカの北朝鮮を見る眼はますます厳しくなってゐた。財務省として新たな金融制裁のあり方も検討したり、連邦議会では北朝鮮による日本の拉致問題解決を求める上下両院の決議が提出され、北朝鮮の人権問題に焦点をあてた公聴会を今後開くことも視野に入れたりと、具体的な行動の確認など積極的な意見交換ができた。
 北朝鮮は昨年末から韓国を敵国として位置づけるやうになり、それに関連して憲法改正を視野に入れるなか、韓国のほうでは北朝鮮による韓国民の拉致被害と救出にこれまでにない力を入れ始めてゐる。金正恩総書記は今年一月、祖国統一三大憲章記念塔を撤去してしまった。これは金日成と金正日の姿勢をも批判的に見るおこなひであり、祖父と父の業績否定につながりかねず、北朝鮮の人々がこのやうな大きすぎる変化に動揺してゐることは間違ひないであらう。韓国のUSBメモリーで韓国ドラマをこっそりと見るなかで、北朝鮮の人々は韓国の実情と発展ぶりを広く知るやうになってもゐる。北朝鮮は法律を作って取り締まりを強化し、視聴した若者らを公開処刑にしてもゐるが、このやうな現状にアメリカのシンクタンクのメンバーは、北朝鮮は自国民の心をつかみきれなくなってゐるのだらうと分析してゐた。日米韓の連携はかつてないほど密である。天が動き日朝首脳会談の水面下の動きが進んで一日も早い解決を見るための力をもらふ思ひだった。金正恩総書記は拉致問題の風化を願ってゐるだらうがさうはいかない。主権国家として日本は必ず解決の日を迎へねばならないし、必ずさうなるであらう。
 さて、今月は骨太の方針が出され、来年度の予算の設計図が見えていく。世界が混乱のなかにあり、防衛だけでなく、経済安全保障、食料安全保障、エネルギー安全保障、医薬品の安全保障などの面で厳しい舵取りが求められてゐる。俯瞰する鳥の眼、細部をとらへる虫の眼、流れをとらへる魚の眼をもちながら、すこやかな日本が輝き続けられるやう努めたい。
(参議院議員、神道政治連盟国会議員懇談会副幹事長)

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