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論説 遷宮奉賛の宣言決議 積み重ねと変化を踏まへ

令和6年06月17日付 2面

 今号掲載の通り、神宮参与同評議員会・伊勢神宮崇敬会代議員会が六月七日に神都・伊勢で開催され、全国の神社関係者など約五百五十人が参集した。
 当日は豊受大神宮・皇大神宮の御垣内参拝、神楽殿での神楽奉奏などののち会議がおこなはれ、功労者顕彰などに続き、事務局が神宮の現況、伊勢神宮崇敬会の会務についてそれぞれ説明。議事の最後には出席者より緊急動議の提案があり、令和十五年に斎行予定の第六十三回神宮式年遷宮の完遂に向けて、奉賛活動を強力に推進する旨の宣言が決議された。また前日には、笹生衛國學院大學教授が「神籬から神宮へ―近年の祭祀遺跡の調査成果から考える神宮社殿の特徴―」と題して講演してゐる。
 今年四月八日、天皇陛下より御聴許を賜った第六十三回の式年遷宮。今回の宣言決議が、本格的な奉賛活動の開始に向けた弾みともなることを期待したい。


 顧みれば、終戦直後の神道指令や宗教法人令改正により神宮も宗教法人となるなか、第五十九回式年遷宮は半官(戦前)半民(戦後)といふ形により、当初の予定から四年の延引を経て昭和二十八年に斎行。それ以降、同四十八年の第六十回、平成五年の第六十一回、同二十五年の第六十二回の式年遷宮と、いづれも天皇陛下の大御心を体しつつ、広く国民の力を結集しての国民奉賛が定着してゐる。
 さうしたなか、御聴許直後に開かれた神宮の参与・評議員による会議においては、これまでも宣言決議などがおこなはれてきた。このうち昭和三十九年六月二十七日の会議における決議では、「全力をあげて御造営御完遂に御協力申上げることを誓ふ」とともに、「国家としても悠久の民族的伝統に基き、是非とも特別協力措置を講ずるやう積極的に折衝されたい」として、神宮の真姿顕現に向けた思ひを表明。先人たちのさうした思ひを真摯に顧みながら、「皇家第一の重事」「神宮無双の大営」といはれてきた式年遷宮の完遂に向けて、奉賛活動の強力な推進に努めたいものである。


 遷宮奉賛をはじめとする神宮奉賛に関しては、平成十五年に神社本庁が「神宮大麻に関する研究会」と「本宗奉賛に関する研究会」とを設置。第六十二回式年遷宮の奉賛活動の開始を目前に控へた時期に、教学的側面や実践的側面をはじめ、そのあり方についての基盤固めがおこなはれたともいへよう。
 昨年、埼玉県で実施された神宮に関する啓発事業においては、一般を対象にした教化活動とするだけでなく、その準備などを通じて神職自らの資質や意識の向上を図ることも意図したといふ。また、神道青年全国協議会は今年四月の定例総会にあたり、「神宮啓発委員会」を「神宮式年遷宮の“こころ”を守り伝へる委員会」に改組し、第六十三回式年遷宮に向けて長期間に亙り積極的な啓発活動に取り組むこととしてゐる。
 これまでの式年遷宮に際しての奉賛活動における取組みを振り返り、その積み重ねを前提にしつつ、今後、より有意義な活動展開が図られることを期待するものである。


 第六十二回式年遷宮の遷御の儀が斎行された平成二十五年から昨年で十年、御聴許を拝した同十六年からはこのたび二十年が経過した。その間、社会環境は目まぐるしく変化してゐる。
 例へば総務省による情報通信機器の世帯保有率の調査によれば、この十数年ほどの間に固定電話やファクス、またパソコンでさへ保有率が減少するなか、多機能携帯電話(スマートフォン)は一〇%から九〇%に増加。インターネットの利用端末としてのスマートフォンの急激な普及は、情報伝達ひいては広報活動のあり方などにも多大な影響を及ぼしてゐるといへよう。またそのやうななか、神宮に全国から多くの参拝者が訪れ、その認知度も高い水準にある一方で、神宮大麻の頒布数・奉斎率が減少の一途を辿るなど、難しい課題もいよいよ顕在化してゐる。
 神宮参与同評議員会・伊勢神宮崇敬会代議員会における遷宮奉賛についての宣言決議にあたり、これまでの奉賛活動における取組みをはじめ、社会の変化や昨今の課題を踏まへつつ、斯界を挙げた対応に努めるべく決意を新たにしたい。
令和六年六月十七日

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