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論説 神政連中央委を終へ 安定的な皇位継承に向けて

令和6年06月24日付 2面

 神道政治連盟の令和六年中央委員会が六月十一日に神社本庁で開催された。前日には都内ホテルで神政連国会議員懇談会の総会が開かれ、さらに神政連の都道府県本部代表や地方議員らとの合同懇談会もあって、相互に情報交換するなどして協力関係を深めた。
 中央委員会の開会式には、目下「政治とカネ」をめぐる問題で国民の厳しい批判に晒されてゐる自由民主党から、来賓として麻生太郎副総裁、萩生田光一国議懇幹事長らが出席して挨拶した。また来年予定されてゐる参議院議員選挙に比例代表として五回目の当選を目指す有村治子議員に対し、打田文博会長から推薦状が手渡された。
 議事においては、令和五年度事業報告、四年度の一般会計歳入歳出決算と特別会計収支計算書、並びに令和六年度の活動方針・事業計画案と一般会計歳入歳出予算案が議案として提出され、いづれも原案通り承認された。


 神政連は今年十一月に結成五十五周年を迎へる。また来年は終戦八十年の節目の年となる。斯界の先人たちが戦後の無秩序な社会混乱と自主独立の民族精神が失はれていく時勢を憂慮し、神道の精神を以て国政の基礎を固めるべく綱領五カ条を掲げて神政連を創立したのが昭和四十四年だった。その年の五月には岸信介元首相を会長とする自主憲法制定国民会議が結成されてゐたが、神政連は皇室の尊厳護持と自主憲法制定の二大目標を中心に、教育の正常化や靖國神社国家護持、政教関係訴訟、夫婦別氏制など時局に対応した諸問題に取り組み、今日まで国民運動を推進してきた。さうしたなかで、とくに今年は、小泉内閣時の皇室典範に関する有識者会議に端を発した皇位の安定的継承の課題と、安倍元首相が提唱してきた憲法改正問題について、その決着を目指す山場となる重要な年となってゐた。


 ところが自民党の「政治とカネ」の問題をめぐり政局の混乱が長引き、この大事な案件はいづれも今国会において結論を出し得ない状況だ。岸田首相と自民党の責任は重大といはねばならない。とくに岸田首相が「先送りできない重要課題」と言明してゐた安定的な皇位継承に向けた皇族数の確保策については、政府の有識者会議の報告、また各党会派による意見集約などを受け、額賀福士郎衆院議長が今国会で「立法府の総意」の取纏めをおこなふとの方針を表明してゐた。しかし五月に入って開催された衆参両院議長と各党代表者らによる会合では、報告書が第一案として提示した女性皇族に婚姻後も皇族の身分保持を認める場合に、その配偶者や子も皇族とするか、一般国民のままとするかなどをめぐって立憲民主党と自民党などとの見解の相違が明らかとなり、立法府としての意見の取纏めが困難な状態となってゐる。もし配偶者が皇族になれば、歴史上初めて一般男子が皇室に入ることとなり、将来的に万世一系の皇統が崩れる虞が出てくる。皇族数確保の本来の目的は、皇位継承資格を有しない皇族の数を増やすことではないはずだ。肝心なことは悠仁親王殿下以降の皇統に属する男系男子の確保策について、いかなる形で事前に法的に準備しておくかである。
 有識者会議では、現憲法下でも皇族身分を有してゐた旧宮家の皇族男子の子孫である男系男子を対象に、現宮家に養子に入っていただく第二案と、法律により直接皇族とする第三案を提示した。だが、さまざまな条件を考慮すれば、養子の実現も決して容易ではない。報告書は第一案と第二案について具体的な制度の検討を進めていくべきとするが、いざといふ時のために第三案も同時に立法化しておくべきではなからうか。対象者となられる旧宮家の方々には、その覚悟を持って生活していただくことが必要であるからだ。


 岸田首相はこれまで、憲法改正についても総裁任期中に実現したいと繰り返し表明してきた。しかし衆院の憲法審査会では、緊急事態に係る条文原案の作成すら立憲民主党や共産党などの反対で実現できず、これまた先送りされる状況で洵に残念なことである。改憲に前向きな野党からは、今後の国会閉会中における憲法審査会の開催を求める意見も出てゐる。自民党がかうした考へを真摯に受け止め、政局と離れて秋の臨時国会での国会発議も視野に入れるなど、憲法改正に向けた憲法審査会の熱意ある運営に期待したい。
令和六年六月二十四日

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