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論説 新年度を迎へて 山積する課題に一致協力を

令和6年07月01日付 2面

 各地の神社で夏越大祓の行事を終へて七月一日を迎へた。今年の七月一日は、古来、田植ゑをはじめとする農繁期の区切りの時期ともいはれてきた雑節の一つ半夏生にあたる。
 一般においては令和六年の上半期が終はり下半期に入ったが、七月一日から翌年六月末日までを会計年度とする神社本庁においては、これから令和六年度の新年度が始まることとなる。この新年度を前に、六月十一日には神社本庁と各都道府県神社庁との間で施策の確認などをおこなふ神社庁事務担当者会が開催されてゐるが、新年度における本庁施策をはじめ、斯界を取り巻く課題や問題意識について、広く神社関係者のなかで共有しておきたい。


 神社本庁では令和六年度からの新たな施策として、「令和六年度神宮大麻頒布向上施策」、第三期「過疎地域等神社活性化推進施策」、第五期「不活動神社対策特別推進事業」をはじめ、各種施策に取り組むこととしてゐる。
 このうち「令和六年度神宮大麻頒布向上施策」は、平成二十六年度から三期九年間に亙り実施してきた「三カ年継続神宮大麻都市頒布向上計画」の成果と課題を踏まへて策定された前年度の施策内容を基本的に踏襲。四月八日に第六十三回神宮式年遷宮の御準備について天皇陛下から御聴許を賜ったことを受け、趣旨にはその完遂に努めることなどが新たに盛り込まれた。また神社庁・支部における活動内容として、式年遷宮の広報に際しての神宮の真姿顕現や神宮大麻奉斎の意義啓発、遷宮奉賛を見据ゑた対応の検討なども示されてゐる。
 前回の式年遷宮では御聴許の翌年に山口祭・木本祭を嚆矢として諸祭・諸行事が始まり、さらにその翌年以降、全国各都道府県において奉賛会が設立された。神宮大麻の頒布はもとより遷宮奉賛・参宮促進を含む神宮奉賛に向けて、さらなる活動推進に努めたい。


 「過疎地域等神社活性化推進施策」に関しては、平成二十九年度からの第一期における推進組織の設置や指定地域と特区の指定、令和三年度からの第二期における推進神社と推進拠点の指定、そして今年度からの第三期における推進神社と推進支部の指定など、施策展開における状況等に鑑み、実施要綱を更改しながら続けられてきた。顧みれば、昭和五十年より実施してきた神社振興対策のモデル神社制度においては、対象神社における取組みの成果を周辺神社にも波及させることが意図されてゐた。それに対して当該施策においては、少子高齢化や人口減少など過疎地域等における昨今の厳しい現状を踏まへ、第一期から一貫して周辺地域を巻き込んだ相互扶助体制の構築を目指してゐることが特徴の一つといへよう。
 また「不活動神社対策特別推進事業」は平成二十七年からの第一期以降、各地で熱心な取組みが見られるものの、事業を進めるなかで新たに不活動神社が確認される事例もあり、その総数はほぼ横這ひの状態が続いてゐる。神社本庁では今後、現地に赴いて関係者から直接事情を聴取する機会を設けるなど、より細やかな対応を図る方針だといふ。
 神社と地域の活性化、周辺地域を巻き込んだ相互扶助体制の構築、さらには不活動神社の解消に向けて、適宜所要の対応・検討がなされることを期待したい。


 このほか、皇位の安定的な継承はもとより、わが国の歴史・伝統に基づく憲法の制定、来年の終戦八十年を踏まへた英霊の慰霊・顕彰、さらに一月一日に発生した能登半島地震の復興支援をはじめとする災害対策――等々、斯界が取り組むべき事柄は山積してゐる。また新たに始まった今年度は神社本庁現役員の任期最終年度にあたってをり、新役員によって迎へる来年七月一日からの次年度には、神社本庁の設立八十周年が控へてゐる。
 終戦、そして神社本庁の設立から間もなく八十年。神社をめぐる社会環境が変化し、人々の意識なども多様化していくなかで、最近は、ややもすれば斯界関係者が一致協力することの難しさを感じさせられるやうな状況もあるのではなからうか。令和十五年に斎行予定の第六十三回神宮式年遷宮の完遂を含めた神宮奉賛をはじめ、神社の振興と護持運営の方途など山積する課題を前に、斯界を挙げて対応を図るべく決意新たに新年度に臨みたい。
令和六年七月一日

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