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論説 社明運動の強調月間 地域社会の一員として関心を

令和6年07月08日付 2面

 法務省が主唱する「社会を明るくする運動~犯罪や非行を防止し、立ち直りを支える地域のチカラ~」(社明運動)の強調月間にあたる七月を迎へた。
 この運動は、すべての国民が犯罪や非行の防止と犯罪や非行をした人たちの更生について理解を深め、それぞれの立場において力を合はせ、犯罪や非行のない安全で安心な明るい地域社会を築くことが趣旨。昭和二十四年七月一日の「犯罪者予防更生法」施行に際し、東京・銀座の商店街の有志が実施した「犯罪者予防更生法実施記念フェアー(銀座フェアー)」や、翌二十五年の「矯正保護キャンペーン」を淵源とし、今年で七十四回目となる。
 現在、全国各地の神職のうち約四百六十人が保護司として、また約百四十人が教誨師として、それぞれ神明奉仕の傍ら更生保護・改善更生に尽力してゐる。保護司や教誨師に限らず、神社が地域社会を存立の基盤としてゐることに鑑みつつ、「安全で安心な明るい地域社会」の構築を目指して「地域のチカラ」に期待を寄せる社明運動について、斯界においても広く理解と関心を深めたい。


 今年の強調月間は、五月に滋賀県で保護司の男性が殺害され、担当してゐた保護観察中の男性が逮捕される事件が発生したこともあり、改めて更生保護について考へさせられるなかで迎へてゐる。
 事件に至る経緯など詳細は未だ明らかではないが、容疑者はコンビニ強盗によって令和元年に懲役三年・保護観察付き執行猶予五年の有罪判決を受けてをり、その保護観察期間はこの七月で終はる予定だったといふ。わづか一カ月余りの保護観察期間を残しての今回の事件。当事者にしかわからない複雑な事情などがあったのかも知れないが、洵に残念といふほかない。
 六十年前の昭和三十九年、保護司が保護観察の対象だった人物により殺害される事件があったものの、それ以降に同様の事件はなく稀な事例との報道もある。いたづらに不安を煽り、保護司が委縮してしまふやうな事態は避けたい。しかしながら保護司が不安を抱へたり、危険を感じたりするやうな実態があるのなら、これを機会に充分な対策を講じることが必要とならう。


 をりしも法務省では昨年五月、「持続可能な保護司制度の確立に向けた検討会」を設置し、保護司の待遇や活動環境、推薦・委嘱の手順、年齢条件及び職務内容の在り方並びに保護観察官との協働態勢の強化等について検討・試行をおこなってゐる。
 今年三月に発表されたその「中間取りまとめ」によれば、保護司からは「保護司活動は危険ではないといふ現実を積極的にアピールしていく必要がある」との声が寄せられてゐる一方で、不安や負担の軽減のため、複数指名制のより積極的な活用を求める意見もある。また、自宅を面接場所とすることへの不安や負担を解消すべく、「更生保護サポートセンター」の設置などすでに各種対策が採られてはゐるものの、「サポートセンター」は場所や時間の関係などから利用に制約が多いとの指摘もあり、今回の事件も面接を予定してゐた自宅が現場となった。
 法務省では、保護司が安心して活動できるやう改めて環境の見直しや整備を進めるとともに、先述の検討会においてもさうした観点から議論を深める予定だといふ。現場の実態・意見を踏まへつつ、早急かつ慎重に所要の対応が図られることを期待したい。


 平成五年以降、法務省では社明運動に対する理解を深めてもらふことを目的に小・中学生を対象とする作文コンテストを実施してきた。これまで全国各地から寄せられた作文には、家庭や学校など日常生活のなかでの体験を踏まへ、犯罪や非行に関して考へたことや感じたことが綴られ、なかには家族が保護司を務めてゐることに対する複雑な思ひや、そのことに真摯に向き合ふ姿などが垣間見える作品もある。
 犯罪や非行の防止に努める更生保護をめぐっては課題も多く、その解決は決して容易ではない。ただ社明運動の強調月間にあたり、更生保護について考へること、真摯に向きふことの大切さを改めて確認したい。一人一人が社会の一員として、安全で安心な明るい地域社会の実現に向けて関心を持ち続けた先にこそ、さうした課題解決の糸口も見つかると信じるものである。
令和六年七月八日

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