論説
神宮大麻暦頒布始祭 遷宮完遂への第一歩として
令和6年09月30日付
2面
前号掲載の通り、令和六年度神宮大麻暦頒布始祭が九月十七日に伊勢の神宮で斎行され、久邇朝尊神宮大宮司から鷹司尚武神社本庁統理に神宮大麻・暦が授けられた。
四月八日に天皇陛下より第六十三回神宮式年遷宮の御準備につき御聴許を賜り迎へた今年の頒布始祭。祭典後の神宮大麻暦頒布表彰式・秋季推進会議では久邇大宮司より、式年遷宮の御準備に関する重要事項について調査・協議をおこなふ諮問機関「神宮式年遷宮準備委員会」の設置に関しての報告もあったが、その答申後にはいよいよ具体的にさまざまな活動が始められることともならう。
遷宮奉賛に向けた活動を見据ゑつつ、今年の神宮大麻・暦の頒布について遺漏なきやう準備を進めたい。
○ 神社本庁では、昭和二十一年の設立直後に神宮司庁から神宮大麻頒布に関する委託を受けて以降、その増頒布に向けて各種施策を推進。戦後の急激な社会変化にともなふ都市対策や団地対策をはじめ、一千万家庭神宮大麻奉斎運動として昭和六十二年度からは指定県制度を、また平成十七年度からはモデル支部制度をそれぞれ実施し、さらに同二十六年度からは神宮大麻都市頒布向上計画を策定するなかで、さまざまな活動を展開してきた。
その後、令和五年度以降は式年遷宮を見据ゑて時機に応じた柔軟な見直しができるやう長期的な計画の策定はおこなはず、年度ごとに施策を検討・推進。今年度の神宮大麻頒布向上施策においては、これまで同様に氏子地域の実態把握と頒布奉仕者の意識向上を主眼としつつ、遷宮の御準備が本格化することを踏まへ、神宮の真姿顕現に努め、神宮大麻奉斎の意義啓発へと繋げていくことも盛り込まれてゐる。また、とくに都市部での社頭頒布に資するべく引き続き広報活動に注力し、かねて若年層への広報が課題とされるなか、現代における通信技術・情報伝達のあり方の変化も考慮しつつ、より効果的な方途なども検討することとしてゐる。
第六十三回式年遷宮の御準備につき天皇陛下からの御聴許を拝した今年、遷宮完遂に向けた第一歩として、心新たに充実した取組みが進められることを期待したい。
○ その神宮大麻の頒布を含め、今後の神宮奉賛活動に資するための基礎資料とすることを企図し、神社本庁ではこのほど「『伊勢神宮』に関する意識調査」を実施。「月刊若木」九月号において集計結果が報告され、本紙(第三六九六号、九月九日付)にも概要が掲載されてゐるほか、今後は報告書の作成も予定されてゐるといふ。
この意識調査は、前回の式年遷宮に際しての御聴許直後にあたる平成十六年、その遷宮直後の同二十六年に続き、今回で三回目。神宮・遷宮・神宮大麻・氏神の認知度、神宮参拝の経験やその回数、神棚の有無、神宮大麻奉斎の有無や拝受の手段などについて、第一回の調査時から二十年間の変化・推移などを確認することができる。
神宮大麻の頒布に関しては、前述の通信技術・情報伝達のあり方をはじめ社会環境の変化が著しいなかで困難な状況も続くが、まづは近時施策で主眼とされてゐる氏子地域の実態把握を通じ、身近な足元の現状を確認することが重要だらう。加へて、かうした意識調査の結果を参考にしながら社会的な動向への理解を深め、今後の活動展開に活かしていきたいものである。
○ 振り返れば今から二十年前、平成十六年度の神宮大麻暦頒布始祭に際しては、先に少し触れたやうに一千万家庭神宮大麻奉斎運動の指定県制度を引き継ぐ新たな施策案として、モデル支部制度についての説明があった。実際に翌十七年度から導入された同施策においては、神宮大麻全国頒布百四十周年の節目にあたる同二十四年を総括の年と位置付け、さらに翌年の第六十二回式年遷宮の啓発・奉賛活動も合はせて展開。二年目の同十八年度には十二年ぶりに神宮大麻頒布数が増体となるなど一定の成果も得られたといへよう。
かうしたこれまでの施策における実績と課題を顧み、また「『伊勢神宮』に関する意識調査」による現状分析などを踏まへ、さらには第六十三回式年遷宮の完遂を視野に入れながら、今後の神宮大麻頒布の施策展開、そのあり方について考へていきたい。
令和六年九月三十日
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