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論説 全国敬神婦人連合会 基本忘れず魅力的な存在として

令和6年10月07日付 2面

 今号掲載の通り、第七十四回全国敬神婦人大会が九月二十七日に北海道札幌市で開催され、全国から約八百人が参加した。会場はとても賑やかな雰囲気に包まれ、参加者は皆楽しげな様子であったといふ。
 しかしながら、昭和二十三年の全国敬神婦人連合会設立時における状況は現在とは大きく異なる。故・鷹司綏子元会長によれば占領下の当時、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)から「再び国防婦人会を作るのではないか」と警戒されたこともあったといふ。そのやうな逆風のなかでの設立ではあったが、各単位会の敬神婦人たちはそれぞれ奉仕神社の護持や家庭祭祀の振興に尽力するとともに、全国組織としては社会福祉事業や家庭教育の充実などに力を注いできた。なかでも東京・永代神社、青森・弥広神社、静岡・駿河神社といふハンセン病患者の心の拠り所となる療養施設内の神社奉斎に係る支援は、戦後神道史に燦然と輝く功績といへよう。


 大会では、令和五年度の会務報告や令和六年度の活動方針・事業計画などが承認された。
 このうち活動方針としては、「皇室敬慕の精神の醸成」「神宮・神社への奉賛活動」「女子神職の育成と『心の教育』の充実」「組織の拡充と会員相互の発展向上」などを提示。また事業計画には、「家庭祭祀の振興と家族の絆を守る運動」「ハンセン病及びその他の社会福祉事業への援護助成」「国旗小旗の作製協力等、国旗掲揚運動への協力」「産育の伝承に関する事業への取組み」「県連及び単位団体の結成促進及び若い世代の敬神婦人会への参加促進」などが盛り込まれてゐる。
 かうした活動方針・事業計画からは、神社本庁指定団体のなかでも敬神婦人による組織として独得の活動に取り組んできたことがわかる。斯界の興隆・発展に対する同会のこれまでの尽力、その活動の重要性を改めて確認しつつ、今後のさらなる活躍に期待したい。


 活動方針・事業計画に「組織の拡充と会員相互の発展向上」や「県連及び単位団体の結成促進及び若い世代の敬神婦人会への参加促進」とあるやうに、同会において近年は組織の拡充・結成促進や若い世代の参加が重要な課題の一つとなってゐる。
 地方の過疎化や都市部の人口集中など社会環境が変化し、また価値観の多様化なども進むなか、かねて人間関係の稀薄化が懸念されてきた。戦後、地縁的な結び付きなど濃密な人間関係のもとでの生活を、ややもすれば個人の自由を束縛するものとして敬遠する一方、とくに最近はインターネットの普及などもあり、地縁などに縛られることなく自らの趣味嗜好・興味関心を前提として社会・人々との関係性を選択していくやうな傾向がより顕著になってゐるやうにも感じられる。
 地域社会のなかで、地縁に基づく氏子といふ意識に支へられてきた神社。今後、その護持運営はもとより敬神婦人会を含めた関係諸団体の活性化や活動を次代へと
繋げることにいかに取り組むべきなのか。近年「社会関係資本」として再評価される地域共同体における構成員の結び付きの重要性や、その象徴としての神社の意義啓発はもとより、常に人々から選択されるやうな魅力ある存在であることが求められよう。


 敬神婦人会を含む関係諸団体は神社護持の基盤である。その組織の拡充や活動の活性化は各団体だけの問題ではなく、神社界全体の課題であることはいふまでもない。
 をりしも昨年神社本庁で策定された三カ年継続の教化実践目標は「氏子意識の涵養と精神の継承に向けて」を主題としてゐる。社会関係資本といふ新たな概念を踏まへ、引き続き魅力ある活動等を通じて氏子意識の涵養を図っていくことが、これからの神社の護持運営において、さらには敬神婦人会を含めた関係諸団体の今後にとって鍵となることを改めて確認したい。
 加へて敬神婦人をめぐっては、女性の社会進出や家庭における役割など、それこそ昨今の社会環境や価値観の変化の影響を考慮することも重要だらう。さうしたさまざまな変化のなかで、冒頭でも触れた鷹司元会長による「良き母親、良き主婦、良き姉、即ち敬神婦人」といふ言葉を忘れずにゐたいものである。
令和六年十月七日

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