論説
神宮大麻頒布の時期に 遷宮の奉賛・完遂を見据ゑ
令和6年12月02日付
2面
師走を迎へ、今年も残すところあと一カ月ほどとなった。斯界においては迎春準備のなかで、神宮大麻・暦の頒布活動が本格化する時期となる。
四月に第六十三回神宮式年遷宮の御準備について天皇陛下から御聴許を拝して以降、初めてとなる今年の神宮大麻・暦の頒布。かねて、神宮大麻・暦の頒布、参宮促進、そして遷宮奉賛が神宮奉賛の三本柱といはれてきた。
寒さいよいよ厳しくなる折、神職・総代や世話人など頒布奉仕者の尽力に改めて敬意を表するとともに、遷宮奉賛に向けた気運醸成のためにも、決意新たに今年の頒布活動がおこなはれることを切に望むものである。
○ 振り返れば、前回の第六十二回式年遷宮における中心的祭儀である皇大神宮(内宮)・豊受大神宮(外宮)の遷御の儀がおこなはれた平成二十五年十月から、昨年でちゃうど十年が経過した。前回の遷宮に際しては、伊勢神宮式年遷宮広報本部などが積極的に広報活動を展開。神宮には今も連日多くの参拝者が訪れてゐる一方で、神宮大麻・暦の頒布数は長く減少傾向が続いてきた。一般の神宮に対する興味・関心の昂りを、いかに氏神神社を通じた神宮大麻・暦の頒布に繋げていくのかが課題といへよう。
またこの間、神社をめぐる社会環境は大きく変化した。例へば、インターネットや多機能携帯電話(スマートフォン)の普及、さらに昨今の会員制交流サイト(SNS)の滲透などは、情報伝達・コミュニケーション、ひいては広報活動のあり方を大きく変容させてゐる。さうしたなか、神社本庁では今年四月に第三回「『伊勢神宮』に関する意識調査」を実施してゐるが、この十年ほどの間に人々の意識もずいぶんと変化しつつあるのではなからうか。
神社本庁による意識調査については今後、詳細な報告書が作成される予定だといふ。この報告書も参考にしながら、さまざまな変化にともなふ課題だけでなく、これからの神宮大麻・暦の増頒布に向けた糸口を摸索したい。
○ 内外両宮の遷御を終へて迎へた平成二十六年、神社本庁では「三カ年継続神宮大麻都市頒布向上計画」を策定。頒布率の低い都市部での頒布向上を主眼に、令和四年の神宮大麻全国頒布百五十周年を見据ゑつつ、三期九年間に亙り各種施策を展開してきた。同計画を推進するなかで、「氏子区域の実態把握」と「頒布奉仕者の意識向上」を重点課題とし、さまざまな媒体を用ゐた重層的な広報活動も実施。また、本庁常務理事を委員長とする「本宗奉賛活動強化推進委員会」が設置され、神宮大麻・暦の頒布等を強力に推進するための施策等の検討・実施、全国頒布百五十周年に向けた施策推進などにも取り組んできた。ただ令和二年以降の数年間は疫禍の影響により従来の戸別訪問による頒布が困難になるなど異例の事態に見舞はれ、思ふやうに活動を進められない状況もあっただらう。
そのやうななかで令和四年の神宮大麻全国頒布百五十周年を迎へた後、令和五年度は次期神宮式年遷宮の準備を見据ゑ、時宜に応じた施策の検討・推進が必要になるとして中期的な計画は策定せず、単年度計画の継続実施を基本とすることとし、今年度も単年度の施策が示されてゐる。
今後は、昨今のさまざまな状況の変化などを踏まへ、また式年遷宮の奉賛・完遂を見据ゑつつ、腰を据ゑた施策の再検討なども重要になってくるのではなからうか。
○ 天皇陛下からの御聴許を踏まへ、今年七月には遷宮御準備の指針となる重要事項について審議する神宮大宮司の諮問機関「神宮式年遷宮準備委員会」の初会合が開かれてゐる。今後、そこで取り纏められた答申内容に基づき、いよいよ具体的な御準備が進められることとならう。
神宮大麻・暦の頒布にはさまざまな課題が存在する。そのなかには少子高齢化や過疎化をはじめ、都市部を中心とした単身世帯の増加など家庭祭祀のあり方に関はる部分を含め、斯界の取組みだけでは解決が難しいものも少なくない。神宮大麻・暦の増頒布は決して容易ではないが、神宮大麻・暦の頒布、参宮促進、そして遷宮奉賛といふ神宮奉賛の三本柱それぞれにおける施策推進が、相互の成果に繋がっていくやうな相乗効果にも期待したい。
令和六年十二月二日
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