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杜に想ふ 新年を迎へ 山谷えり子

令和7年01月01日付 11面

 皇紀二千六百八十五年、令和七年、謹んで新春のお慶びを申し上げます。新年を迎へるにあたり、聖寿無窮、五穀豊穣、天下泰平、国土安穏、万民豊楽を祈念いたします。
 厳しい国内外の情勢なればこそ、国恩のありがたさが身にしみる。乙巳(きのと・み)の本年は、どんなに外界の抵抗が強くても屈することなく、柔軟性をもって結果を出していく年と言はれてゐる。六十年前の乙巳の昭和四十年には佐藤榮作総理が戦後の総理として初めて沖縄を訪問、七年後の沖縄返還へと結びつけた。朝永振一郎先生のノーベル物理学賞受賞は今日につながる量子電磁力学分野の発展の第一歩であったことも改めて驚嘆する。巷ではモーレツ社員、金田正一氏の「やったるで」が流行語となってゐた。いづれも時代を切り拓くエネルギーを感じる。
 蛇を守護神や祖先神とする民族は多い。世界保健機関(WHO)の紋章も蛇がシンボルとなってゐる。成蛇は冬眠してゐる時以外は数カ月に一度の脱皮を繰り返すといふから生命の更新と不死身のただならぬ力を人々は感じてきたのだらう。門松をくぐりながら「脱皮せぬ蛇は滅びる」「門松を多くくぐった人にはかなはない」「艱難汝を玉にす」と言ってゐた父の笑顔を思ひ出す。
 最近は若者の“夢離れ”が心配である。夢と希望を抱いて社会人となっても大学新卒の一割が一年以内に、三割が三年以内に離職するといふデータがあるが、簡単にあきらめてしまふのは悲しく、いかにももったいない。エネルギーを溜め込んでこその脱皮でなければ、力強い生命の更新はできないだらう。
 故・安倍元総理は大学の卒業式のスピーチで「第一次安倍政権はたった一年で幕を閉ぢました。(中略)もう安倍晋三は終はった。みんなさう思ったんです。(中略)その後、自民党総裁選挙で何とか勝利し、総裁に復帰し私たちは政権を取り戻しました。なぜ不可能と言はれた総理への再登板が可能となったか。それは決して私が特別優れた人間だったからではありません。残念ながら特別強かったからでもない。ただ一点決して諦めなかったからであります」と述べられた。生命の言葉だと思ふ。
 また、出光興産の社長、出光佐三は、終戦二日後の昭和二十年八月十七日、「一、愚痴を止めよ 二、世界無比の三千年の歴史を見直せ 三、そして今から建設にかかれ」と店員に奮起の訓示をおこなった。
 本年は大東亜戦争終結から八十年といふ節目の年にあたる。祖国の繁栄と世界平和のため、尊い生命を捧げられた御英霊のお心を思ひ、感謝と不屈の精神で前進し続けねば先人たちに申し訳ない。昭和二十一年の歌会始で昭和天皇は
ふりつもる み雪にたへて いろかへぬ 松ぞをゝしき 人もかくあれ
と御製をお詠みになられた。
(参議院議員、神道政治連盟国会議員懇談会副幹事長)

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