論説
新春を迎へて 今年の展望と内外の課題
令和7年01月13日付
2面
今年は全国的に比較的穏やかな年明けとなったやうだ。天皇陛下には一月一日、四方拝に臨まれるとともに、歳旦祭に出御遊ばされた。恒例の新年一般参賀も二年ぶりに執りおこなはれ、六万人余の参賀者が天皇陛下よりありがたい「おことば」を賜ってゐる。
昨年は年初に能登半島地震が発生し、九月には奥能登での豪雨被害も重なった。天皇・皇后両陛下には年末までに三度に亙って被災地お見舞ひのため石川県に行幸啓されてゐる。
今年は終戦八十年を迎へるが、終戦二十年以来、旧指定護国神社における周年の臨時大祭にあたっては、特別の思召しを以て天皇陛下からの幣帛料が神前に奉献されてきてゐる。このほか報道によれば、四月開催の大阪・関西万博開会式への御臨席、さらにいはゆる四大行幸啓を含め今年は埼玉・三重・滋賀・兵庫・広島・長崎・沖縄各県への行幸啓が予定・検討されてゐるといふ。
また皇室においては今春、秋篠宮家の悠仁親王殿下が高校を御卒業になり筑波大学に進学されるが、昨年九月に十八歳になられたことを受けて成年式が執りおこなはれることとなる。
○ 神社界においては、令和十五年に斎行が予定される第六十三回神宮式年遷宮に向けた諸準備が本格化する大事な年となる。神宮司庁ではすでに一月一日、神宮大宮司を総裁とする執行機関として神宮式年造営庁が発足した。
前例に倣へばこの春には、天皇陛下より御用材を伐り出す御杣山の御治定を仰ぎ、また遷宮諸祭の嚆矢となる山口祭・木本祭が日時御治定のもと斎行される。さらに御樋代木を伐採する御杣始祭、御樋代木を両宮域内へと曳き入れる御樋代木奉曳式ののち、日時御治定のもとで斎行される御船代祭へと続くこととなる。この間、御杣山から伐り出された御神木を伊勢へと搬送するにあたり、東海地区では神社関係者などによる御神木奉迎送の行事も盛大に執りおこなはれてきた。
二十年に一度の神宮式年遷宮は「皇家第一の重事」「神宮無双の大営」といはれてゐる。神社関係者として、改めてその完遂に向けた覚悟を新たにしたいものである。
○ 国政においては、七月に参議院議員選挙が予定されてをり、与党の過半数維持が最大の焦点となる。もし過半数割れとなれば、衆参両院ともに少数与党に転落し、石破茂首相の進退が問はれることとならう。また通常国会の成り行き次第では、野党から内閣不信任案の提出も予想され、決議されれば再び衆議院は解散され、衆参同時選挙となることも考へておかねばならない。神道政治連盟ではすでに、五期目を目指す有村治子議員を比例代表候補として推薦することを決定してをり、当選に向けた体制作りが急がれる。
さらに今月召集される通常国会では予算案の議論の他に、選択的夫婦別姓化の民法改正案が野党から提出されることがほぼ確実となった。とくに立憲民主党の野田佳彦代表が実現に強い意慾を示してをり、与党内でも公明党の斉藤鉄夫代表が別姓化を推進してゐて、法案成立の可能性が憂慮される。
マスメディアでも、すでに産経新聞で一月一日から「ごまかしの選択的夫婦別姓議論」のタイトルで連載が始まった。同紙ではさまざまな問題を取り上げて解説し、実情をよく知らない一般国民に警鐘を鳴らしてゐる。最高裁判所も判示してゐるごとく、「社会の自然かつ基礎的な集団単位」である伝統的な家族の制度を変へるには余程の慎重さを要する。一国会で片付けるやうな案件ではないことを、今後とも強く訴へていくことが重要といへよう。
○ 終戦八十年の今年、米国大統領に再びドナルド・トランプ氏が就任する。「米国を再び偉大な国に」との旗を掲げ、「アメリカ第一」を唱へて大統領選に勝利したトランプ氏は、すべての同盟国に対して軍事費の大幅増額を要求しつつ、関税引き上げなどの経済圧力を加へて中国と対峙していくこととならう。一方、中国の習近平国家主席は、「偉大な中華民族の復興」を目指して「富強」を国民に訴へ、権威主義諸国を味方に引き入れて米国と対峙していく。かうした対立の激化の引き金ともなる台湾の問題が、今年は一層緊迫性を増してくるに違ひない。我々は国内政治だけに没頭してゐては国を危ふくすることも肝に銘じておきたい。
令和七年一月十三日
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