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【新刊紹介】本居宣長 ―天地万物、皆吾ガ賞楽ノ具ナルノミ― 田尻祐一郎著

令和7年02月10日付 6面

豊かな地平への道のり 青年の足跡を描く評伝

 「天地万物、皆吾ガ賞楽ノ具ナルノミ」――青年期の本居宣長が友人に宛てた書翰の言である。
 本書は、これまで『徳川思想史の研究――情理と他者性』や『山崎闇斎の世界』など、近世における儒学・国学・神道を中心に、日本思想史研究に関する多くの成果を発表されてきた東海大学名誉教授・田尻祐一郎氏の手になる本居宣長の評伝である。
 「吾ガ賞楽」の地点にゐた青年が如何なる道のりを経て、あらゆる「物」に「あはれ」を感得する豊かな地平へと辿り着いたのか、著者はその足跡を克明に描き出す。

 本書には、「宣長その人を感じ取っていただければ」との著者の思ひから、随所に宣長自身の言葉が配されてゐる。
 読者は、その一つ一つの言葉から宣長の息吹を感じ取りつつ、著者により紐解かれた世界――すなはち、この世に生起するあらゆる物事に「あはれ」を感じ取り、目に見えない神々の働きに思ひを致す、人の心の豊かな可能性を見出した国学者・本居宣長の精彩を放つ一生と彼が切り拓いた世界とを追体験することができるであらう。
〈税込4180円、ミネルヴァ書房刊。ブックス鎮守の杜取扱書籍〉
(國學院大學研究開発推進機構ポスドク研究員・入倉滉太)
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