論説
御杣山の御治定 遷宮完遂に遺漏なく準備を
令和7年02月10日付
2面
前号掲載の通り、神宮司庁はこのほど第六十三回神宮式年遷宮にあたり御用材を伐り出す御杣山について、一月十五日付で天皇陛下より御治定を賜り、木曽谷国有林(長野県木曽郡上松町)と裏木曽国有林(岐阜県中津川市)に決定したことを発表した。
前回の式年遷宮においては、二十年前の平成十七年六月三日に木曽谷国有林で御杣始祭を、同五日に裏木曽国有林で裏木曽御用材伐採式をそれぞれ斎行。さらにその後、御神木の伊勢への奉搬に際し、道中の長野・岐阜・愛知・三重各県の神社関係者らによる御神木奉迎送が盛大に執りおこなはれてゐる。またそれに先立つ五月二日には、遷宮諸祭の最初の重儀として天皇陛下による日時御治定のもと山口祭・木本祭が斎行された。
令和十五年に予定される第六十三回式年遷宮。諸祭儀の開始が近づくなか、その完遂に向け決意を新たにしたい。
○ をりしも三重県の首都圏営業拠点「三重テラス」(東京・日本橋)において、「伊勢神宮 式年遷宮へ向けて―神宮の魅力を語る―」と題する催しが実施された。神宮司庁、神宮式年造営庁、公益社団法人伊勢志摩観光コンベンション機構の三団体が主催し、伊勢市が協力してゐる。その内容は本紙記事に譲るが、いよいよ始まる第六十三回式年遷宮に向けて、神宮の魅力をシリーズで紹介する企画の第一弾としての位置付け。会場の都合も影響してか、やや少人数での催しだったが、むしろ出演者と参加者との距離が近く好評だったやうだ。
地域振興のための観光客誘致など、各地で官民協働の取組みが進められるなか、今後も観光協会や自治体など関係機関の連携のもと、広く神宮・式年遷宮の魅力を発信する機会が設けられることが望まれる。斯界としても式年遷宮が古来「皇家第一の重事」といはれてきたやうに、それが東海地方の一神社における単なる式年祭などではないことをはじめ、積極的に広報活動を進めていきたいものである。
○ 神宮司庁や神社本庁などではさうした広報活動に関して、前々回の式年遷宮においては昭和六十二年に伊勢神宮式年遷宮広報事業推進本部を、また前回の式年遷宮においては平成十六年に伊勢神宮式年遷宮広報本部を組織し、それぞれ各種活動を展開してきた。
前々回はシンボルマーク・標語の募集、伊勢神宮所蔵近代美術展の開催、イメージソング・イメージキャラクター(イセコッコ)・広報ビデオ・外国語パンフレットの制作などを企画。前回は伊勢神宮展・シンポジウムなどの開催、奉賛曲・奉祝曲の制作と演奏会の実施、公式ウェブサイトの開設・運営、インターネットを活用した動画配信などに取り組んできた。また各地の神社庁・支部・神社をはじめ指定団体・関係団体などでも、それぞれさまざまな広報活動が実施された。
昨今は通信・情報伝達の技術が急速に進展し、広報活動のあり方も大きく変化しつつある。これまでの取組みを参考に、関係者の連携・協力のもと情報共有を図りながら、より有意義な活動の展開が期待されるところだ。
○ 神社本庁が本宗と仰ぐ伊勢の神宮。斯界においては神宮大麻・暦の頒布、遷宮奉賛、参宮促進が神宮奉賛の三本柱といはれてきた。その遷宮奉賛に関しては昨年、式年遷宮の御準備に関する重要事項を調査・協議する「神宮式年遷宮準備委員会」において、募財機関としての「財団法人伊勢神宮式年遷宮奉賛会」設立の必要性についても言及があったといふ。
前回の式年遷宮においては、御杣山において御杣始祭や裏木曽御用材伐採式が執りおこなはれた平成十七年の暮れに伊勢神宮式年遷宮奉賛会の設立発起人会があり、翌年四月に文部科学大臣から正式に財団法人としての認可を受けた。さらに、その翌月に神宮のお膝元である三重県で地区本部が設置されたのを皮切りに、全都道府県において奉賛会が組織されてゐる。
天皇陛下による御杣山の御治定を拝し、いよいよ第六十三回神宮式年遷宮の諸祭儀の開始が近づくなか、前回・前々回の例なども参考にしつつ、また昨今のさまざまな社会環境の変化なども踏まへながら、遺漏なく広報活動・奉賛活動の準備を進めていきたいものである。
令和七年二月十日
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