論説
新総裁・新政権 高市新首相の登場に期待
令和7年11月03日付
2面
自由民主党の高市早苗氏は、マスコミなど大方の事前予測を覆し、三度目の挑戦で総裁選に勝利した。決め手となったのは、全国の地方党員による支持率の高さだったといへよう。さらにその後、国会での首班指名選挙では、立憲民主党などの野党が衆参両院で多数を制するものの統一候補を立てられず、高市総裁は急遽、日本維新の会と新たな連立を組み、その支持を得て首相となり得た。
初代の伊藤博文以来、百四代にして憲政史上初の女性宰相が誕生した。世界の主要国が会集するG7において、英・独・伊はすでに女性首相が就任してゐるが、米・仏などは未だ例がない。日本は政府も首都もトップとして女性が活躍する国となった。高市首相には、自由民主主義国家の力強いリーダーとして、日本人の底力を信じ、日本の存在を再び世界で輝かせるべく、首脳外交での活躍も期待したい。
○ 高市首相は、総裁選で競ひ合った四人全員を党と内閣の主要ポストに取り込んで強力な挙党体制を固めた。一方で、平成十一年の小渕恵三内閣以来となる公明党との連立は、政権の安定には役立ったが、政権与党としてなすべき国家の重要政策実現の足枷ともなってゐたのは否めない。それゆゑ公明党が高市総裁を拒否し、敢へて離脱を決めたことは、自民党を覚醒させ、保守政党として本来の使命遂行に邁進するチャンスを与へることとなった。
新たに政権を組むことになった日本維新の会は、理念や政策面で自民党と共通する所が多い。首相選出に先立って結んだ連立政権合意書の前文では、「国家観を共有し、立場を乗り越えて安定した政権を作り上げ、国難を突破し、『日本再起』を図ることが何よりも重要」との認識のもと、「自立する国家」として「わが国の平和と独立をどう守るか」といふ「リアリズムに基づく国際政治観及び安全保障観を共有する」と記す。また、「戦後八十年にわたり、国のかたちを作り上げる過程で積み残してきた宿題」と、「冷戦後の三十年」に積み残してきた宿題を解決するための改革が急務であると強調。以下、十二項目に亙って具体的な解決策と改革事項が明記されてゐるが、積み残してきた課題には、論争を巻き起こし、相当の期間を要するものも多く含まれてゐる。そのため、長期の安定した政権の維持がどうしても必要となってくる。
○ 高市首相による十月二十四日の所信表明演説では、党の政調会長や内閣経験の実績に加へ、本人がこれまで広範に政策研究を重ね、何度か公に発表してその必要性と重要性を訴へてきた事柄がベースになってをり、それだけに自信に満ちた力強いものとなった。その内容としては、経済、食料、エネルギー、国土強靭化、健康医療、人口・外国人対策など、いづれも安全保障の見地からリスク管理が一体的に捉へられてをり、強力な経済成長も危機管理投資によるものとしてゐる点に最大の特色がある。
我々がとくに注目してゐる皇室と憲法改正に関しては、行政府の総理の立場から立法府の各党各会派、また国民に対し、議論の加速化と深化を期待するに止まった。しかし先に触れた連立政権合意書では、「皇室・憲法改正・家族制度等」の一項が設けられてをり、皇室典範については令和八年通常国会での改正を目指すとし、憲法九条改正については令和七年臨時国会中に両党で条文起草協議会を設置することを明記、緊急事態条項は令和八年度中に条文案の国会提出を目指すとした。また家族制度についても、「旧姓の通称使用の法制化法案を令和八年通常国会に提出し、成立を目指す」としてゐる。合意の実行と法案内容について、今後とも注目して見守っていきたい。
○ 安部晋三元総理の精神的・政治的な遺産を継承し、日本再起と保守の挽回を目指す高市首相の登場は、わが国の国政上の歴史的転機となり得る。外交安全保障の面でも、「地球儀を俯瞰する外交」を引き継ぎ、同盟・同志国との首脳外交を一層強化することが大事で、その継続が望まれる。
自由民主党は今年十一月十五日に結党七十年を迎へる。党是としてきた自主憲法制定は、七十年間積み残してきた最大の宿題といはねばならない。皇室典範と憲法改正についての真摯な取組みを期待してやまない。
令和七年十一月三日
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