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論説 全国神社総代会大会 遷宮奉賛に向けて力を結集

令和7年11月10日付 2面

 今号掲載の通り、第六十回全国神社総代会大会が十月二十八日に長野県で開催され、全国から役員・総代など約千三百人が参集した。
 大会では、清興として地元・戸隠神社に伝はる太々神楽が披露されたのち、長野県立大学の金田一真澄学長による記念講演を実施。講演後の式典では、主催者からの式辞に続き神社功労者表彰がおこなはれ、功績顕著な役員・総代など六十三人が栄に浴した。また来賓祝辞や被表彰者からの謝辞があったほか、五月の代議員会で決議された令和七年度事業計画について報告。さらに大会宣言を採択するなどして大会は盛会裡に幕を閉ぢた。
 神社神道の昂揚と神宮の奉賛及び神社の護持に貢献することを目的とする全国神社総代会。各地の神社において日々奉仕に励む役員・総代の尽力に改めて敬意を表するとともに、神社の基盤である地域社会での繋がりの稀薄化などさまざまな課題が山積するなか、そのさらなる活躍を期待したい。


 大会における宣言では、「第六十三回神宮式年遷宮に向けて神宮奉賛の誠を捧げ、神宮大麻の頒布活動に一層尽力するとともに、皇室敬慕の念の醸成に努める」「神職と一致協力して、祭祀の厳修と適正な神社運営に努めるとともに、地域社会の活性化に資するべく、伝統文化の継承と共同体意識の昂揚に努める」「鎮守の森の保護育成を通じて、次代を担ふ健全な青少年の教化育成に努める」といふ三項目の目標が掲げられた。
 このうち第六十三回神宮式年遷宮については、その諸祭・諸行事の嚆矢として五月に山口祭と木本祭が斎行され、六月には御杣始祭・裏木曽御用材伐採式や御樋代木奉曳式、九月には御船代祭がそれぞれ執りおこなはれてゐる。さうしたなかで、今後の募財活動を担ふ奉賛会の設立についても慎重に準備が進められてゐるといふ。
 国民総奉賛による遷宮完遂に向けて、各地の役員・総代の協力は欠かせない。奉賛会の設立準備が進むなか、今回の大会を一つの契機とし、全国各地において遷宮気運のさらなる醸成、遷宮奉賛に向けた意識の喚起が図られることを切に望むものである。


 今回の全国神社総代会大会は、第六十回の節目の大会だった。昭和三十三年に発足した全国神社総代会において、かうした大会は同四十年から実施。昭和天皇の御不例にともなふ会場・内容の変更や、近年では疫禍による延期・中止などもあったが、これまで全国各地で開催されてきた。
 本紙紙面によると、昭和四十年十一月十一日の第一回大会は神宮のお膝元、三重県伊勢市の神宮会館を会場とし、全国各地から約八百人が参集してゐる。その議事では、第六十回式年遷宮を八年後に控へるなか、田中喜芳神宮少宮司が「今回の式年遷宮は最初から国民奉賛によって執り行はれねばならない点において、これまでにない全く異例の性格の御遷宮である」ことを説明して協力を要請。それを受けて遷宮奉賛に積極的に努力することを満場一致で可決したほか、閉会に先立ち伊勢神宮奉仕会の村田仙右衛門氏が翌年の「お木曳行事」に向けて全国からの参加を呼びかけたといふ。
 当時、初めて「最初から国民奉賛によって執り行はれねばならない」異例の遷宮であることが強く意識されてゐたことが感じられ、また新例として全国からの奉仕者を一日神領民(特別神領民)として受け入れる「お木曳行事」を控へての昂揚感なども窺はれる。


 この昭和四十八年の第六十回式年遷宮ののち、平成五年の第六十一回、同二十五年の第六十二回を経て迎へた今回の第六十三回式年遷宮においても、来年から「お木曳行事」が始まることとなる。この六十年の間に国民総奉賛は定着したが、もとより真姿顕現といふことも忘れてはなるまい。また「お木曳行事」や、その伝統継承を目的とする神嘗祭に際しての初穂曳には、これまで一日神領民(特別神領民)として多くの人々が参加してきた。
 第六十回の節目となる全国神社総代会大会にあたり、式年遷宮を控へて伊勢で開催された第一回大会以来の先人たちの歩みを顧みたい。その上で、第六十三回式年遷宮の完遂に向けて神職と役員・総代の力を結集し、決意新たに遷宮奉賛に向けた諸活動に臨みたいものである。
令和七年十一月十日

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