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論説 歳末の辞 過去を顧み問題意識の共有を

令和7年12月15日付 2面

 令和七年も残りわづかとなり、本紙は今号を以て年内付の最終号となる。
 大東亜戦争終結八十年の節目を迎へた今年、天皇・皇后両陛下には四月に東京・小笠原村の硫黄島、六月に沖縄県と広島県、九月に長崎県、十月には東京都慰霊堂に行幸啓遊ばされたのをはじめ、七月のモンゴル国行幸啓に際しては現地の日本人死亡者慰霊碑を訪れられ、それぞれ戦歿者等の慰霊にお努めになられた。さらに全國護國神社會加盟の護国神社五十二社で終戦八十年臨時大祭が斎行されるにあたり、畏くも幣帛料を御奉納遊ばされてゐる。
 また天皇陛下には八月十五日、例年通り「全国戦没者追悼式」に御臨席になり、「戦後の長きにわたる平和な歳月に思いを致しつつ、過去を顧み、深い反省の上に立って、再び戦争の惨禍が繰り返されぬことを切に願い、戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し、全国民と共に、心から追悼の意を表し、世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります」との「おことば」をお述べになられた。大御心を体し、過去の戦争がどのやうなもので、いかなる反省が求められるのかをしっかりと考へつつ、今後とも英霊の慰霊・顕彰に努めたい。


 第六十三回神宮式年遷宮に関しては今年五月に諸祭・諸行事の嚆矢として山口祭・木本祭が斎行され、引き続き六月には御杣始祭・裏木曽御用材伐採式や御樋代木奉曳式が、九月には御船代祭がそれぞれ執りおこなはれた。このうち御用材を伐り出す御杣山、山口祭・木本祭や御船代祭の日時については、それぞれ天皇陛下より御治定を賜ってをり、また陛下には先月、遷宮費として神宮に御内帑金を御献進遊ばされてゐる。
 この御内帑金は、第五十九回式年遷宮(昭和二十八年)に際し、昭和天皇から御沙汰があったことが始まり。第六十回(同四十八年)でも御沙汰があったのち、第六十一回(平成五年)は御代替りを経て御献進が続けられ、さらに前回の第六十二回(同二十五年)の後、令和の御代となって迎へた今回の第六十三回にあたり、上皇陛下から今上陛下へと受け継がれた。
 式年遷宮は、第四十代・天武天皇の御発意に基づき第四十一代・持統天皇の御代に始められ、国家における厳粛な公事として、大御心を体して執りおこなはれることを本義としてきた。さうした式年遷宮が、千三百年に亙り連綿と続けられてゐることの尊さに思ひを致しながら、その奉賛活動に向けて決意を新たにしたいものである。


 国政においては今年、明治十八年の内閣制度創設にともなふ初代・伊藤博文以来、百四代にして高市早苗氏が憲政史上初の女性宰相となった。
 衆参両院における首相指名投票の直前に公明党が連立離脱を表明するなど厳しい状況のなかではあったが、高市氏は新たに日本維新の会と「連立政権合意書」を交はして首相に就任。その後、衆議院では無所属議員の合流により過半数を確保したものの参議院では依然として少数与党のままで、かねて懸案となってゐる経済対策をはじめ困難な政権運営が続くが、報道によれば支持率は現在も六割から七割の高水準を保ってゐるといふ。また七月の参院選においては、自由民主党の歴史的大敗といはれるなかで、神道政治連盟の推薦を受けた有村治子氏が貴重な一議席を堅持。総務会長として党執行部入りを果たして新総裁を支へてゐる。
 安定的な皇位継承や憲法改正の取組みはもとより、複雑さを増す国際環境への対応などを含め、故・安倍晋三氏の精神的・政治的な遺産を継承する高市氏のさらなる活躍に期待したい。


 大東亜戦争終結八十年を経て迎へる来年は、神社本庁の設立と神社新報の創刊から八十周年の節目にあたる。
 この本庁設立や新報創刊に限らず、英霊の慰霊・顕彰、式年遷宮のあり方を含めた神宮の真姿顕現、また先述の安定的な皇位継承や憲法改正をめぐる課題などは、多かれ少なかれ大東亜戦争の敗戦と関はり、とくに斯界においては占領下の神道指令に起因する影響が今に残るといへよう。
 大東亜戦争終結、そして本庁設立・新報創刊の節目に際し、まづはさうした神道指令の「亡霊」の払拭に努めてきた先人たちの歩みを顧みたい。その上で、現在も残るさまざまな課題について、改めてより広く問題意識を共有する機会としたいものである。
令和七年十二月十五日

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