論説
過疎の研究会と研修会 共有した情報と学びを活かし
令和8年03月02日付
2面
今号掲載の通り、神社本庁の第三期過疎地域等神社活性化推進施策推進神社・推進支部研究会が二月十二日から十三日にかけて、また研究会終了後の十三日午後には過疎対策教化研修会がそれぞれ開催された。
令和六年七月一日から同九年六月末日までの三年間を指定期間とする同施策。今回の研究会は、これまでの活動実績を検証するとともに、最終年度に向けた活動の充実に資するため情報交換をおこなひ、活動事例や課題を共有することなどを趣旨とする。また研修会は、過疎地域の現状を見据ゑつつ、人的資源をはじめとするさまざまな資源の発掘・活用など、神社の活性化に繋がる可能性について事例を中心に学ぶことを趣旨に実施された。
参加者それぞれが研究会・研修会の成果を地元に持ち帰ることで、活動のさらなる充実・推進に結び付くことを大いに期待するものである。
○ 研究会において「『みんな』でまつりを守る・繋ぐ」と題して基調講演をおこなった國學院大學観光まちづくり学部准教授の石垣悟氏は、「祭り行事」について考察。観光(グローバル)とまちづくりや地域活性化(ローカル)を混在・融合させた「グローカル」といふ概念を示した上で、「祭り行事」は特定集団のものではなく、「みんなのもの」であるといふ視点を紹介した。また神社本庁教化講師の加藤健司氏は神事芸能の保存・継承の方途に関する質問に答へ、伝統芸能は個別具体的で同じものが一つも存在しないため特効薬のやうな解決策は存在しないとしつつ、さまざまな対応事例を示してそれぞれ利点・欠点があることなどを説明してゐる。
振り返れば、平成三十年からの第一期過疎地域神社活性化推進施策の実施要項では、「祭祀の継続が危惧される過疎地域において、神職及び氏子・崇敬者の相互扶助により祭祀の厳修、振興を図ることで、神社及び地域の活性化を推進することを目的とする」と明記。祭祀の厳修をはじめ、石垣氏や加藤氏が言及した「祭り行事」や神事芸能・伝統芸能など祭礼行事の振興といふことが施策の基本にあった。さうしたことにも改めて留意しつつ、さらなる施策展開を図っていきたい。
○ また研修会で、「犯罪情勢と防犯対策」と題して講義した三井住友海上火災保険株式会社の顧問を務める手塚貴博氏は、元警視庁警察官としての経験なども踏まへながら、近年の犯罪をめぐる状況について解説。とくに賽銭泥棒や銅板の盗難事件など神社における被害状況を説明し、その対策について紹介した。加へて、近年は働き方改革や少子高齢化などによる労働力不足を背景に、警察官の人員確保が難しくなってゐる現状を指摘。さうしたなかで警察署における一部業務の警察本部への集約や、警察本部による警察署への機動的な支援態勢の構築、警察署間の人員の統合運用、交番・駐在所等のあり方の見直しなど、業務の効率化・合理化が進められてゐることを説明した。
そもそもこの警察組織における業務の効率化・合理化の話は、地域によっては一一〇番通報から警察官の現場到着までの時間が長くなる虞があることを示し、防犯対策の一層の徹底を呼びかけるものだった。ただ、警察組織における都道府県警察本部、警察署、交番・駐在所等との関係は、斯界における都道府県神社庁、支部、神社(本務社・兼務社)などと類似する部分もあらう。少子高齢化にともなふ人手不足を背景とした警察組織の対応は、斯界における過疎地等での相互扶助体制の構築などを考へていく上でも少なからず参考になるのではなからうか。
○ もちろん先に触れた伝統芸能の保存・継承の場合と同様、神社とそれを支へる地域の状況は千差万別であり、例へば「会議で事例発表を聞いても、状況が違ひ過ぎて役に立たない」などといふやうな意見を耳にすることもある。確かに神社・地域の活性化のための特効薬は存在しないのかも知れず、また神職及び氏子・崇敬者だけでは解決できない課題なども多い。
研究会の事例発表では「やることによって何かが変はる」といふ発言もあった。かうした言葉を胸に、研究会で共有した情報を参考とし、また研修会での学びを活かしつつ、それぞれが試行錯誤しながら今後の活動について検討していくことが重要といへよう。
令和八年三月二日
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