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論説 國大・皇大への期待 入学式を終へて

令和8年04月20日付 2面

 四月二日に國學院大學で、また翌三日には皇學館大学でそれぞれ入学式が挙行された。新入生の入学を言祝ぐとともに、これからの学生生活が充実したものとなることを心より願ふものである。
 平成四年以降の十八歳人口の減少を前に「大学冬の時代」といふ言葉が聞かれるやうになってから、すでに四十年余が経過した。現在も、約六十三万人の大学進学者が二十年後には四十二万人程度にまで減少すると推計されるなど、少子化は全国各地の大学にとって引き続き大きな課題だ。とくに近年は、地方の私立大学が経営難から募集停止となったり、地元自治体へ公立化を要望したりするやうな報道も見られる。また大手予備校の分析によれば、これまで全国から広く志願者を集めてきた都内の著名大学でも、志願者・合格者の七割以上を首都圏出身者が占めるやうになるなど、もはや全国区とは呼べない状況にあるといふ。
 さうしたことに鑑みても、國大や皇大の志願者確保に向けた取組み、平素からの教職員の尽力に敬意を表する次第である。


 國大の神道文化学部、皇大の神道学科ともに今年の志願者募集はおほむね堅調な結果だったと聞くが、同学部・同学科における志願者減少は、神職資格取得者・奉職希望者の減少に直結するだけに、人手不足に悩む斯界にとっても他人事ではない。両大学に対しては、かねてから神職資格を取得する卒業生の数を大きく上回る求人が全国の神社から寄せられる状況が続いてゐる。
 もちろん人手不足は斯界に限ったことではなく、他の業界でも同様の状況があり、完全な売り手市場となってゐる。また終身雇用・年功序列賃金制といった、いはゆる日本型雇用慣行に変化が見られ、労働市場の流動化や働き方の多様化なども進むなか、社家出身の神職課程履修者であっても、自らのキャリアデザインの一歩は神社ではなく、一般企業を考へるといふ場合もあるやうだ。
 受け入れ側の神社でも「ぜひわが社に奉職を」と、待遇改善を含めた労働環境の整備などさまざまな努力をしてゐるだらうが、改めて神明奉仕の尊さや魅力を伝へるやうな取組みが、大学と斯界との連携のもとでなされてゆく必要があらう。


 さうしたなか、國大では新年度の入学生からカリキュラム(教育課程)の改定がおこなはれ、これまでの昼間主・夜間主のコース区別を一元化して七時限制へと移行。ただし都内神社に住み込んで昼間は神務実習をおこなひ、夜間は大学で授業に出席する神社実習生制度の継続のため、従来通り夜間時間帯のみの授業履修でも四年間で卒業できるやう時間割が編成されてゐる。また神社実習生の授業履修を前提に、実践力を身に着ける教育課程として新たに「実践的神職養成特別コース」が設けられた。
 神社実習生は、忍耐強さと実践力を兼ね備へた人材として斯界で一定の評価を得てきた。また長年、都内の実習神社と地方の社家・奉務神社といふ斯界内の結び付きに基づく制度として機能してきたのである。
 一方、皇大では、神職後継者の育成を目的に、神職を志す若者を支援する給付型奨学金制度「神職後継者育成給付金」を新たに設置。総合型選抜入試「神職後継者選考」で入学し、神職課程を履修する者を対象とし、二年次以降も神社への奉職意思が堅固な者のなかから選考の上で給付が継続されることになる。國大にも同趣旨の奨学金制度があり、後継者となる神職子弟が両大学へと進学する上での一助となる試みとして歓迎したい。


 政府においては、この四月から「子ども・子育て支援金制度」を導入するなど少子化対策のさらなる推進に努めてゐるが、もとより一朝一夕に成果が表れるものでもなく、常態化する少子化傾向に改善の兆しはなかなか見られない。
 さうしたなかにあって、高等神職養成機関としての國大・皇大の両大学が、学術の教授・研究はもとより、大学運営を左右する入学者の確保に努めつつ、神職養成のために尽力してきたことはいふまでもない。今後も斯界に対して有為な人材が輩出されるためにも、両大学のさまざまな取組みに引き続き期待するものである。
令和八年四月二十日

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